第80章

 桜井城の言葉を聞いても、桜井有菜の表情にはさざ波ひとつ立たなかった。そのあまりの淡泊さに、城は心底から湧き上がるような薄ら寒さを覚えた。ここに至ってようやく、城は悟ったのだ。自分たちは、この桜井有菜という小娘を侮っていたのかもしれない。祖父が彼女を後継者候補に選んだのには、それ相応の理由があったのだと。

 空港の待合室に到着すると、そこには既に先客がいた。美しい金髪の女性だ。

「ダーリン、待ちくたびれたわよ!」

 ニックだ。欧米風のファッションに身を包んだその姿は、まるで別人のようだった。

 ハイヒールに、パンクファッション。有菜は思わず顔を覆った。他人のフリはできないものだろうか...

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