第2章

水曜日の朝、八時。月光ギャラリーは静まり返っていた。床から天井まである窓から陽光が差し込み、真っ白な壁を照らし出している。

鍵穴にキーを差し込み回すと、その音は、これまで一度もなかったほどに響き渡った。いつもなら今頃はもう、蓮の足音が堅木の床を往復し、市場予測か投資ポートフォリオについて電話で話す彼の声が聞こえてくるはずなのに。

でも、今日は? 何もない。私と、この静寂だけだ。

『七年間で、一人でギャラリーを開けるのはこれが初めてだ』

メインの展示スペースを歩くと、ヒールの音が床にこつこつと響いた。壁に飾られているのは、蓮が望んだものばかり――アートの仮面を被った、安全な投資物件。こっちには現代アーティストの版画、あっちには現代彫刻作品。どれも一流の名前で、リターンが保証されたものばかりだ。心がときめいたり、想像力が掻き立てられたりするような作品は、一つもなかった。

オフィスに入ると、パソコンのモニターに黄色い付箋が貼ってあった。蓮の、走り書きのような雑な字だった。

「クライアントとの打ち合わせで先に出る。鍵はデスクの上。 ―A」

私はそれをじっと見つめた。何か別の言葉が浮かび上がってくるのを待つように。「おはよう」の一言も、「昨夜のこと、話さなきゃ」という言葉もない。あるのは事務連絡だけ。ビジネスだけだ。

革張りの椅子に身を沈めると、きしむ音がした。すると突然、意識はまったく別の場所へと飛ぶ。七年前の、この同じ空間。もっとも、当時はまったく違う場所だったけれど。狭くて、ごちゃごちゃしていて、壁は塗り直しが必要で、床も張り替えなければならなかった。でも、ああ、そこには無限の可能性が満ちていたのだ。

蓮は、私の月々の家賃よりも高価なスーツを着て現れた。母の遺産を鑑定するために雇われたのだ。私はてっきり、母のコレクションを買い叩こうとする、また別のハゲタカが来たのだと思っていた。なのに彼は、一時間もかけて母の写真を吟味し、本当に、真剣に見てくれたのだ。

母が支援していた無名の写真家の一枚を手に、彼は言った。「君には見る目があるね、美月。たいていの人間は値札を見る。でも君は、魂を見ている」

「コレクターだけじゃなく、普通の人にアートが語りかけるような、そんな空間を作りたいんです」笑われるのを半ば覚悟しながら、私はそう告げた。

だが、彼は笑わなかった。彼の目は、まるで当たりくじを渡されたかのように輝いた。「だったら、一緒に作ろう。月光ギャラリー――最高の芸術は、微かな光の中でこそ、その姿を現すから」

『いつから「一緒に」は、「蓮が決めて、美月が実行する」に変わってしまったんだろう?』

変化は一夜にして起きたわけではなかった。たぶん、三年前。沙耶が初めて高級ブランドのヒールを鳴らして、私たちのギャラリーに足を踏み入れたのが、その頃だ。蓮はまるで新しい飼い主を見つけた子犬のように、彼女の後ろをついてきた。彼女は、私たちが丹精込めてキュレーションした新進アーティストのコレクションを、隠そうともしない軽蔑の目で見渡した。

その夜、蓮はまるで彼女の意見が神託であるかのように告げた。「沙耶が言うには、うちは無名作家に固執しすぎているそうだ。もっと名のある作家が必要だ」

「でも、新進アーティストを支援するのが、私たちの最初のビジョンだったじゃない」まだ自分の言葉に重みがあると信じていた、世間知らずな私はそう反論した。

彼はタブレットでオークションのカタログをスクロールしながら、私の言葉を軽くあしらった。「ビジョンじゃ飯は食えないんだよ、美月。戦略的にならないと」

その時、沙耶は私に微笑みかけた。それは、まるで子供のおままごとを見ているかのような、見下したような唇の歪みだった。「美月さん、情熱も素敵だけど、マーケットが求めているのは洗練よ」

本当の決裂は、二ヶ月前に訪れた。若い女性写真家が、ポートフォリオを送ってきたのだ。帝都に住む移民家族を撮った、生々しく、胸に突き刺さるような写真の数々。一枚一枚が、生命力と、葛藤と、そして希望に満ちて脈打っていた。アートがなぜ大切なのかを思い出させてくれる――そんな作品だった。

「彼女の作品は、私たちの世代に語りかけてる」私はその夜、ダイニングテーブルに写真を広げながら蓮に懇願した。「生々しくて、正直で、今の時代にこそ必要なものよ」

「時代に必要でも、売れるとは限らないんだ、美月」彼は携帯から目を上げることすらなかった。

いつの間にか私たちのビジネスディナーの常連になっていた沙耶は、まるで物分かりの悪い子供をあやすように私の手を叩いた。「美月さんには、もう少し幅広い美術の知識が必要かもしれませんね」

『その瞬間、私は自分のギャラリーで、自分が異邦人になってしまったことに気づいた』

私はラップトップを開き、メールソフトを立ち上げた。メッセージを送ってきているのは、私たちが契約している――いや、蓮が新進気鋭の才能はリスクが高すぎると決める前に、契約していたアーティストたちだ。私はキーボードの上で指を動かし、一人一人に、言葉を慎重に選びながらメッセージを打ち込んだ。

「近々、ギャラリーの方向性に大きな変化があるかもしれません。あなたの作品は、ここで常に価値あるものであったと知っておいてほしいのです」

若い写真家には、もっと個人的な内容を書いた。「あなたのビジョンを諦めないで。本物の芸術のために、まだ戦っている者もいます」

『蓮がここを企業のショールームにしたいのなら、私抜きでやればいい』

最後のメールを送信し、背もたれに寄りかかった。「お母さん、信じるもののために立ち上がるって、あなたが教えてくれたことを思い出す時が来たのかもしれない」

玄関のドアに鍵が差し込まれる音がして、顔を上げた。でも、それは蓮の聞き慣れた足音ではなかった。ヒールの音だ。意図的で、床に鋭く響く。ガラス張りのオフィスドア越しに、沙耶がギャラリーに入ってくるのが見えた。まるで自分のものだと言わんばかりに闊歩し、所有者の満足感をたたえた視線で壁をなめ回すように見ている。

私は深呼吸をしてバッグを掴み、オフィスから出た。

「美月さん!」沙耶が振り返る。その笑顔は、いつも通り完璧だった。「ちょうど、あなたと蓮さんが、あのアダムスの作品を私に長期貸し出ししてくれるのはいつ頃かしらって思ってたところなの」

「貸し出しはできません」私の声は、氷のように冷たかった。

「でも、蓮さんが――」

「蓮が間違っていたの」私は彼女の言葉を遮った。視線は揺るぎなく、瞬きもしない。「誰にでも所有されるべきではないものもあるのよ」

私はしばらく沙耶を見ていた。彼女は明らかに何か言いたげにそこに立っていた。それから私は背を向け、ドアに向かって歩き出した。この程度の相手に、私の時間を費やす価値はない。

沙耶の笑顔が、ほんの一瞬凍りついた。彼女が何かを言いかけた時、私の携帯が鳴った。画面に蓮の名前が光る。

ギャラリーの駐車場に座り、沙耶の銀色の高級車が通りの向こうに消えていくのを見ていると、携帯が光った。画面には蓮の名前。私は一瞬それを見つめ、親指を「拒否」ボタンの上でさまよわせた。

「もしもし?」

「やあ」彼の声は疲れていた。あるいは、緊張しているのかもしれない。「ええと、その、両親から電話があって。また日曜にディナーをやるんだって。母さんが、俺たちがいつ来るのかって聞いてて」

若いカップルが手をつないで、何かを笑いながら通り過ぎていくのを見た。彼らは、とてつもなく幸せそうに見えた。

「わかった」

「来てくれるのか?」彼の声には、あからさまな安堵がにじんでいた。「母さんが、君の好きなオマール海老のあの料理、作るってさ。ワインソースのやつ」

雅子おばさんと隆志おじさん。ああ、あの二人は私によくしてくれた。いや、よくしてくれたなんてもんじゃない。雅子さんは私を本当の娘のように扱ってくれたし、隆志おじさんは……私が訪ねていくといつも、顔を輝かせて、新しく見つけた作品を嬉しそうに見せてくれた。

『二人にだけは、ちゃんとお別れを言うべきかもしれない』

「何時に?」

「六時だ。それと美月、昨夜のことだけど――」

「日曜日に」

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