第5章

火曜の夜、十一時。ベッドに腰掛け、ラップトップを開いた私は、まるで映画でも選ぶかのようにフライトの選択肢をスクロールしていた。北海、帝都空港、新上谷――どこだってよかった。とにかくここから逃げ出したかったのだ。

『三週間。すべてから離れるために、三週間だけ必要』

傍らには、スーツケースが口を開けたままになっており、中には考えもなしに掴み取った服が半分ほど詰め込まれている。予約確定を待つ間、スマートフォンの写真を削除し始めた。七年分の写真。ギャラリーのオープニングでの蓮と私、ナパでの休暇の写真、先月の記念日ディナーでの馬鹿げた自撮り。

『この笑顔のうち、どれが本物だったのかしら?』

消...

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