第108話グレイス

リースのオフィスは、今や証拠保管室と化していた。二つのホワイトボードは付箋だらけで、そこには様々な情報の断片を繋ぐ線や図が所狭しと書き込まれている。私は一日のうちで、この時間が一番嫌いだった。毎日午後二時から二時間は調査のために確保され、四時からはそれについての話し合いが行われる。問題は、私が文字をあまり上手く読めないことだ。だから、この時間帯の私は全く役に立たない。

リースは優しさから、私が学び続けられるようにと課題を与えてくれていたけれど、彼とレオンが古い文献や、「レッドブラッド」の群れから極秘に追跡している情報――資金の動きや、群れの内部および外部との接触記録――を慎重に調べている間、...

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