第111章:グレイス

リースの唇が私の唇に激しく押し付けられた。どうやって座席から体を捻って私に覆いかぶさってきたのか見当もつかなかったが、そんなことはどうでもよかった。レオンが前席で目的地もわからない場所へ車を走らせていることも、すれ違う人々に丸見えなことも、体勢が少し窮屈なことも、何もかも気にならなかった。ただ、私を支えてくれる座席の存在がありがたかった。私の手は彼の体を彷徨い、唇を開いて彼を受け入れた。体の芯に熱が宿り、もっと欲しいと求めてしまう。今はそんな時ではないと分かっていたし、彼も同じように求めているのは明らかだったけれど。

「はいはい、お熱い二人さん、もうすぐ着くぞ」

私たちは体を離したが、二人...

ログインして続きを読む