第155章:リース

廊下の壁に寄りかかり、グレースが俺を品定めするのを待った。彼女は俺を階段の下に残して何かを取りに行き、走って戻ってくると、この黒いワイシャツを着るように命じたのだ。彼女はほとんど口をきかなかった。少なくとも、罵倒以外の言葉は発していない。俺は彼女の唇の動きと、その口でしてほしいあんなことやこんなことに気を取られていた。

「集中して、リース!」彼女は低い声で言った。

「集中してるよ」俺は答えた。

「ええ、私に集中しないでって言ってるの」彼女は苦々しく言い返す。

「それは無理な相談だ。俺の番(つがい)はイイ女だからな。怒ってる時は特にそそる」俺は彼女の鼻を軽くつつきながらからかった。

「...

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