第184話グレイス

悪夢から覚め、私は空気を求めてあえいだ。心臓が早鐘を打ち、血流の音が耳の奥で轟いている。一体全体、あれは何だったの? 思考が追いつかない。あまりにも強烈な夢だった。

リースが隣で跳ね起き、彼もまた荒い息を吐いていた。彼は私の腰にまたがると、狂ったように私の全身を視線でスキャンした。どうしたというの? 何かあったのだろうか?

私の視線が彼の唇に吸い寄せられ、思わず自分の唇を舐めた。あんなことがあった直後に、こんなことを考えていていいのだろうか? 所詮はただの悪夢だ。実際に命に関わるようなことじゃなかった。自分の「番(つがい)」に欲情するのは勝手だが……せめて二人とも息が整うまで待つべきだろう...

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