第233章:恵み

今まで感じたことのない激痛が走り、私は叫び声を上げた。まともな思考なんてできない。国境はすぐそこだったのに。もう逃げ切れたと思ったのに、目の前が真っ白になるほどの痛み。息ができない。

「大丈夫?」下から小さな声がした。

なんてこと。誰かの上にのしかかっていたなんて。最悪だわ。

私はうめき声を上げて少女の上から転がり落ち、こみ上げてくる吐き気を必死に飲み込んだ。国境は目の前。安全な場所まであと少し。なのに、複数の狼が追いかけてきている。

「行きなさい」私は絞り出すように言った。

「血が出てる!」少女は恐怖に叫んだ。

私は無視した。言われなくてもわかってる。滴り落ちるのがわかるから。矢...

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