第258話:リース

俺はショックを隠せずに番(つがい)を見つめた。本気か? あの箱が彼女を文字通り「選ばれし者」と呼んだ直後に、結婚の話を持ち出すのか? 一体どういうことなんだ? 何でもないことのように受け流すなんて、どうしてできる? だが、その瞳に宿る真剣な光を見ると、彼女の言葉なら何でも、すべてを聞きたくなってしまう。箱に触れた瞬間、そこから溢れ出した魔力の感覚がまだ俺の中に残っていた。

「今の、一体何だったの?」

メイジーが最初に声を取り戻して問い詰めた。

「怪我はない、あなた?」

母さんが心配そうな顔でグレースに尋ねた。俺もきっと同じ顔をしていただろう。

グレースは母を見たが、その顔には驚きがありあ...

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