チャプター 3: 恵み
私は身じろぎもしなかった。エイドリアンが私とアルファ王の間に立ちふさがり、その手は私の肩にきつく食い込んでいる。私は生唾を飲み込んだ。口を開けばトラブルになるだけだ。エイドリアンの前で言葉を発するなんて、万に一つもあり得ない。
「こいつは口がきけんのです」
エイドリアンが苛立ちを隠さずに唸った。自分の定めたルールであるにもかかわらず、私の代わりに説明しなければならないのが不満なのだ。彼は私たちをアルファ王の方へと向き直らせた。いくらエイドリアンが強大でも、王に背を向けるのは賢明ではないと判断したのだろう。
アルファ王が鼻を鳴らして大気の匂いを嗅ぐのを見て、私は身がすくむのを必死にこらえた。
「匂いがしないな」
アルファ王は眉をひそめ、私を凝視した。まるで私が何らかのトリックで彼を欺いているとでも言うかのように。
「狼を持っていないんですよ」エイドリアンは退屈そうに答えた。私の話をすることほど、彼が嫌うものはない。「要するに、完全に無価値な女だということです」
アルファ王はさらに深く眉を寄せ、困惑した様子で私を観察した。私はただそこに立ち尽くし、気を取り直そうと努めた。泣くものか。私が答えられない問いの答えを探す彼の視線を、私はじっと受け止めた。
「目につかない所にいろと言ったはずよ!」
ドアが荒々しく開き、キンズリーが入ってきた。エイドリアンが私の肩に手を置いているのを目撃したのだ。彼女が来ることは分かっていたが、だからといって事態が好転するわけではない。
エイドリアンが私をキンズリーの方へ向けると、彼女は腕を大きく振りかぶり、私の顔を平手打ちした。頬が恥ずかしさでカッと熱くなり、今度は涙をこらえることができなかった。彼女がさらに強く打とうと再び腕を振り上げたその時、アルファ王が割って入った。
「何をしている?」
その声には微かな興味が含まれていたが、表情は能面のようだった。彼が何を考えているのか、私は死ぬほど知りたかった。
「このアマに身の程をわからせてやってるのよ」
キンズリーは激怒して息巻いたが、振り上げた手はそれ以上動かなかった。
「使用人たちには、いつもそのような扱いを?」
アルファ王の声は穏やかだったが、その響きにはどう受け止めるべきか分からない何かが潜んでいた。顔は依然として無表情のままだが、もしかしたら気にかけてくれているのかもしれない、と期待してしまう自分がいた。そうでなければ、わざわざ尋ねたりしないはずだ。そうでしょう?
悲劇のヒロイン気取りのキンズリーは、すぐに嘘泣きを始めた。
「ごめんなさい。ちょっと気が立っていて! グレースは私の母を殺したのよ。顔を見るだけで辛くて! 彼女は罪を償っているだけなのだけど、ついカッとなってしまって。あなたにまで害が及ぶんじゃないかと心配だったの」
さらに多くの涙が目に溢れ、私は声を殺して泣いた。動く勇気はなかった。継母を殺してなんていない。彼女は唯一、私に優しくしてくれた人だった。どうして殺したりする? 胸が張り裂けそうだったが、この言いがかりは聞き飽きるほど聞かされてきたものだ。
「出て行け、グレース。キンズリーを動揺させるな。この話は後だ」エイドリアンが唸るように言った。
アルファ王は鼻を鳴らした。「彼女が君の母親を殺したと? 見たところ十六、いや十八か? 君の母親が死んだのは数年前だろう?」
私はその場に凍りついたまま、顔を上げることも、息をすることもできなかった。キンズリーも言葉を失っているようだった。彼女が痛いところを突かれることなど滅多にないからだ。
「死んだのは六年前よ」長い沈黙の後、キンズリーはようやく答えた。「グレースは十四だったわ。善悪の区別くらいつく歳よ」
「なるほど」
私は視線を床から上げ、アルファ王が私を注意深く見つめているのに気づいた。罠にはめられたのだと彼に分からせる術はない。この戦いに勝てる見込みはなかった。誰も私を信じない。罰が重くなる前にここを出るのが最善だ。私は一度だけ頷き、ドアの方へ歩き出した。
「実は、その娘を私と共に北へ連れ帰りたいと思っている」
アルファ王が宣言した。その口調は、異論など許さないという響きを帯びていた。「この件は、起きた時点で私に報告されるべきだったのだ。正規の手順を守らぬ者を、私は好まない」
私は凍りついた。北へ連れて帰るってどういうこと? 自分で私を罰したいの? また地下牢でいつ終わるとも知れない時間を過ごすことになるの? 嫌だ。あんな思いはもう二度とごめんだ。恐怖からか痛みからか、体が震え始めた。どちらでも同じことだ。
「人殺しなんて連れて行ってどうするの?」
キンズリーが尋ねた。王の声に含まれる警告に気づかず、それはほとんど要求のような口調だった。
「和睦の印と考えてもらいたい。そちらとしても人殺しを置いておく必要はないだろうし、私なら使い道を見つけられると思う。空いている役割はいくらでもあるのでね」
アルファ王の声は穏やかで、彼らに話しかけてはいたが、その目は片時も私から離れなかった。私を見つめるその瞳には、炎のような光が宿っていた。「繰り返しは好まないが、この件は発生した時点で私の耳に入れるべきだったのだ」
彼がキンズリーの話を信じたのかどうか気になった。信じられたと考えるだけで吐き気がした。王と行くことは、今の状況よりどれほど酷いことになるのだろう。エイドリアンも強いが、アルファ王の肉体は明らかに鍛え上げられたものだ。オーラもエイドリアンより遥かに強く、息をするのも苦しいほどだった。私は壁に手を伸ばし、必死に体を支えた。どちらがより最悪な結末なのかは分からない。だが、アルファ王について行くのは恐ろしかった。
「我々に和睦の印が必要ですかね?」
エイドリアンが鼻を鳴らす。彼が何を考えているかは分かっていた。お気に入りのサンドバッグ、つまり私を手放すのを渋っているのだ。
「必要だとも」
王は不敵に笑った。私は呼吸を整えようと必死だった。こんなことが起きるなんて。「交渉を始める前にね。だが、きっと合意に至れると確信しているよ」
「なら、取引成立ですね、アルファ・リース」
