第35章:リース

俺はレオンを脇に引っ張った。彼も同じことを考えているらしく、心得たような目配せをしてきたが、皆の前で口に出すのは二人とも避けたかった。パニックを煽る理由はない。少なくとも、今はまだ。

『これがレッドブラッド・パックの真の姿かもしれないな』レオンがマインドリンクを通じて言ってきた。人狼の聴覚は完璧だ。離れた場所に移動したとはいえ、声に出して話すリスクは冒したくなかった。

『あり得る。ということは、グレースもこの……この獣だという可能性もある』俺は答えた。

『よせ』レオンが警告した。『悪い方へ考えるな。お前の目に怪物(モンスター)に見えるからといって、実際にそうだとは限らない。人間から見れば...

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