第57章:恵み

私は深く息を吸い込み、椅子からできるだけ身を乗り出すようにして距離を取ろうとしたが、結局は立ち上がって彼との間に少しスペースを空けることにした。

「あ」アーロは顔を上げ、私が動いたことに気づいて驚いた声を上げた。「ごめんなさい、グレース。君との距離を考えていなかった」

彼は数歩後ろに下がった。おかげで私は席に戻ることができたが、本当は座りたくなんかなかった。「大丈夫です」私は口ごもった。

彼は微笑んで、手つかずの紅茶を指した。「約束するよ、毒なんて入ってないから」彼は少し笑った。

私も微笑み返そうとしたが、心臓は早鐘を打っていた。キンズリーも毒なんて入ってないと言っていたけれど、間違い...

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