第65章:リース

俺は驚きとともにグレースを見つめた。これほどまでに彼女が怒る姿など、今まで見たことがなかった……いや、そもそも彼女が怒る姿自体、一度も見たことがなかったように思う。仮にあったとしても、これに比べれば些細なものだったはずだ。彼女の青い瞳は感情を少しも隠そうとせず、そこで燃え盛る怒りに、俺は心配と興奮を同時に覚えた。グレースの全く違う一面を目の当たりにして、ゾクゾクするほどだった。

「心配するな、愛しい人」俺はそう言いながら彼女の前にしゃがみ込み、その頬を優しく撫でた。「奴らには償わせる。君を傷つけようとした報いは、必ず受けさせるから」

「本気よ、リース」彼女は少しだけ俺を突き放すようにして言...

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