第69章:リース

俺は不安に駆られながら、境界線を歩き回っていた。レオンからはしばらく連絡がなかったが、彼が後始末のために現地に残り、ソーヤーだけが戻ってくることは分かっていた。詳しい事情を聞くまでは怒りを抑えようと努めていたが、グレースから目を離した弟を殺してやりたい気分だった。今回はグレースにとって安全な旅になるはずだったのだ。彼女はただでさえ一生分のトラウマを抱えているというのに。俺たちがようやく築き上げた脆い信頼関係が、これで壊れてしまうのではないかと気が気ではなかった。

検問所に車が見えるより先に、俺は彼女の気配を感じ取った。彼女のもとへ駆け寄りたいという本能を、必死の思いで抑え込んだ。彼女を圧倒し...

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