第7章:恵み

恐る恐る、ゆっくりと目を開けた。すべてが現実ではない、ただの夢だったのではないかと怖かったのだ。しかし、そうではなかった。私は、これまで眠ったこともないような最高に寝心地の良いベッドの中にいた。太陽がカーテン越しに輝いている。そして記憶にある限り初めて、誰も部屋に入ってきて私の眠りを妨げなかったことに気づいた。悪夢も見ていない。奇妙な感覚だったが、私はそれをとても気に入った。

ビクリと体を震わせた。ドアが控えめにノックされただけなのだが、それにも慣れていなかったのだ。以前いた「群れ」では、いつだって誰かが突然押し入ってくるのが当たり前だったから。

ゆっくりと身を起こすと、毛布が足元に滑り落ちた。ちょうど昨日会ったばかりの使用人の一人が、ドアから顔をのぞかせた。

「まあ、よかった。お目覚めですね、お嬢様」彼女は微笑んだ。金色の髪はフレンチブレイドのお団子にまとめられていて、歳は私と同じくらいのようだ。

私は頷いたが、言葉は発しなかった。彼女がドアを開け放ち、大きなトレーに載った食事を運んでくると、私の目は飛び出るかと思うほどに見開かれた。

その様子に彼女は声を上げて笑い、私はぎこちなく、小さな笑みを返した。

「ところで、私はアラナです。昨日のこと、覚えていらっしゃるかわかりませんが、身の回りのお世話をさせていただきますね。アルファ・キングが下でお待ちです。本当はゆっくりしていただきたいのですが、少し時間が押しておりまして」アラナはようやく一息つくと、私の手元にトレーを押し付けた。「食事を始めてください。その間にお風呂と着替えを準備しますね。よろしいですか?」

私はまた頷き、ためらいがちに食事を見つめた。あまりにも選択肢が多すぎる。これほど多くの選択肢を与えられたことも、予定についてこちらの意向を尋ねられたことも、今まで一度だってなかったのだ。なんだか変な気分だった。

アラナは部屋中をせわしなく動き回りながら、とりとめのない話をぺちゃくちゃと続けたが、私は彼女の存在に安らぎを感じていた。彼女は、私の周りにはいなかった太陽のような明るさを持っていた。仕事がこんなふうに楽しいものになり得るなんて知らなかったし、自分に向けられる関心をどう受け止めていいのかもわからなかった。

いくつかの料理を一口ずつ食べてみたものの、私は落ち着かずに身じろぎした。大半は口に合わなかったが、ビスケットは気に入った。今の私の胃が受け付けられるのは、それくらいのものだった。

「お食事はお済みですか、お嬢様?」

私は頷くと、慎重にトレーをサイドテーブルに寄せ、毛布を体に巻き付けたまま立ち上がった。幸いなことに、アラナは私が一人になりたいのだと察してくれたようで、何も言わずに部屋を出て行ってくれた。

私は時間を無駄にすることなく、できる限り急いで体を洗い、一日の支度を整えた。アルファ・キングをこれ以上待たせたくなかったし、すでに待たせてしまっているような気がしてならなかったからだ。急いで櫛を通し、髪を編んだ。その動きで背中がずきりと痛んだが、「もっと酷い痛みだって経験してきたのだから」と自分に言い聞かせた。

用意されていた服ほど素敵なものを、私はこれまで身につけたことがなかった。青い花柄があしらわれたシンプルなドレスで、長袖になっており、裾は膝のすぐ上までの丈だ。普段着ているドレスはもっと丈が長いのだが、これでもなんとかなるだろう。

部屋を出ると、すぐ外にアラナが待っていてくれてほっとした。昨日案内してもらったはずだが、見せられた場所を一つも覚えていなかったのだ。

アルファ・キングのいる場所へ向かう道中、神経が焼き切れそうなほど緊張していた。彼は私に何を求めているのだろう? 私と結婚したいと言っていたけれど、それは本気なのだろうか? 彼は誰から見ても有名な存在だし、私よりも美しい人たちが過去に彼に言い寄ってきたことも知っている。だからこそ、同じ疑問に立ち返ってしまうのだ。「なぜ、私なのか?」と。

「グレース」

その低く荒い声に、私は思考の海から引き戻された。

私は彼を見つめた。その目は、恐怖で見開かれていた。

「さあ、行くぞ。約束の時間だ」

私は眉をひそめた。約束? 一体何のために?

歩きながら、彼は私の混乱を察したように言った。「医者のところへ行って、その傷を診てもらうんだ。身体検査も受けてもらう。君の体には、いつついたとも知れない傷跡が無数にあるからな。誰が、なぜそんなことをしたのか知りたいんだ」

私は足をもつれさせたが、彼はそちらを見もせずに手を伸ばし、私の体勢を立て直してくれた。

診療所は敷地内にあった。以前いた群れの敷地内に医者がいた記憶はないが、これは一般的なことなのだろうか……。それとも、彼がアルファ・キングだからこそ、これほど近くに専属医を置くなど、望むままになんでもできるということなのだろうか。

消毒液の匂いがしそうな無機質な建物に入ると、不意にリスの懐から着信音が鳴り響き、私は思わず飛び上がってしまった。

「ただの電話だよ」カウンターの向こうから声が掛かる。「そんなに怯えなくていい」

アルファ・キングは彼を鋭く睨みつけたが、何も言わずに電話に出た。カウンターの男は、アルファ・キングを少し若くしたような容姿をしていた。同じダークブラウンの髪だが、彼の方が短く刈り込まれており、瞳の色はアルファ・キングよりも濃い色をしていた。

「行ってくれ、グレース」アルファ・キングは優しく言った。「終わったら合流しよう、いいな? どうしてもこの電話に出なくちゃいけないんだ」

私は頷いたが、見知らぬ他人に自分の最も無防備な姿を晒さなければならないという恐怖は、少しも和らぐことはなかった。

「噛みついたりはしないよ」その男は屈託なく笑った。「僕はソネット医師。リスのお気に入りの弟さ。それにしても、君は可愛いねえ。ま、僕のことはソーヤーと呼んでくれ」

私は何も答えず、ただ彼について診察室へと向かった。彼が私の存在をまるで冗談か何かのように扱っている気がして不快だったが、あるいは私という存在自体が冗談みたいなものなのかもしれない。

彼は手際よく診察を始めたが、その間も口を閉じることはなかった。

「あのね、兄貴は旅先から大勢の女性を連れ帰ってきてるんだけどさ、そのうちの何人かは僕の病院のお世話になってるんだ。でも、君が間違いなく一番の重傷だね。一体何があったの?」

私は答えなかった。頭の中が混乱し、記憶が駆け巡っていたからだ。アルファ・キングにはかつて婚約者がいたと聞いたことがある。長年にわたり数多くの女性との噂があり、その中には消された者もいると囁かれていた。私は生唾を飲み込んだ。次は、私の番なのだろうか?

医者は私の反応を見て笑ったようだ。「まさか自分が最初だなんて思ってなかっただろう? 残念ながら違うよ。長い間、兄貴は新しい群れに行くたびに新しい女の子を連れ帰ってきたんだ。金髪、ブルネット、赤毛……タイプなんて関係なしにね」

彼は聴診器を手に取りながら、私をしげしげと眺めた。「でも、君みたいな見た目の子は初めてだと言っておくよ。だから、もしかしたら君は特別になれるかもね。兄貴、君のこと相当気に入ってるみたいだし」私が落ち込んだのを察したのか、ソネット医師はそう言ってからかった。

私は何も言わなかった。言うべきことなど何もない。私は壊れた人間で、彼もすぐに興味を失うだろう。彼の関心を引き留められるほど、私は変わることができるだろうか? そもそも、そうするべきなのだろうか? 私は「ルナ」になるような器ではない。ましてや「クイーン・ルナ」なんて。そんなことを考えているうちに、私は気分が悪くなってきた。

解放されるやいなや、私はそこから逃げ出した。残念なことにアルファ・キングはロビーで待ってはいなかったが、そんなことはもうどうでもよかった。私は迷いながらもなんとか今朝出た部屋まで戻り、鍵をかけて閉じこもった。自分の運命はどうなるのか、そして、この傷を治すことに、完治にかかる時間に見合うだけの価値が本当にあるのか、そんなことばかりを考えていた。

壁を見つめながらベッドに横たわっていると、部屋のドアが開く音がした。振り返って確認することはしなかったが、ベッドの端に腰を下ろしたのが誰なのかは痛いほどわかっていた。私たちの間には、ただ沈黙だけが漂っていた。

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