第90章:恵み

風が私たちの周りで唸りを上げ、冷たい空気に鳥肌が立った。暗闇も、寒さも、静寂も……そのすべてが嫌だった。私はこの状況がたまらなく不快だった。

「こんな高い場所で、一体何をしているの?」

私は骨の髄まで染み込んでくる冷気を防ごうと、自分の体を両腕で抱きしめながら尋ねた。

「もし追っ手がここまで来たら、もう逃げ場がないわ」

イーサンは人間の姿に戻ると、いつの間にか持っていたバッグから服を取り出し、素早く着替えた。そして、少し暖かそうな服を私の方へ放り投げた。

「これを着ろ」と彼は命じた。

寒さで歯がガチガチと鳴っていた私は、迷うことなくその長いズボンと靴下、そして靴を身につけた。

「...

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