第93章:リース

屋敷の廊下には死体が転がっていた。強烈な死臭が鼻をつく。俺の民……俺が守ると誓った者たちだ。だが、今はそんなことなどどうでもよかった。グレースだ。

俺は脇目も振らず階段を駆け上がった。微かに動いている者もいたが、明らかに絶命している者もいる。これほど酷い惨劇を目にするのは、両親が死んだあの夜以来だ。だが、今は何もかもどうでもいい。

俺は狼としての感覚を研ぎ澄ませ、グレースの匂いを追った。俺が自分の階を通り過ぎ、あのがたつく梯子の前で立ち止まると、レオンが驚いた気配がした。俺は人の姿に戻り、隠しておいたバッグから短パンを取り出して穿くと、梯子を登った。なぜグレースが屋上にいるとわかったのか、...

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