第6章

田中明彦は気まずそうな表情を浮かべると、すぐさま病室を後にした。

まもなく、病院の廊下から慌ただしい足音が響き、白衣を纏った医師の一団が病室になだれ込んできた。

トップクラスの医療チームが直ちに林原智哉の全面的な検査を始め、私は丁重に脇で待つよう促された。

「林原さんの各指標はすべて安定しています」

ベテランらしき医師の一人が私に報告した。

「もう退院できますよ」

「おめでとうございます、奥様。もう我慢なさらなくても大丈夫ですよ!」

林原智哉は問い返した。

「何を我慢するんだ?」

私は少し気まずくなった。

誰も彼の問いに答えない。林原智哉は再び尋ねた。

「...

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