第4章

 蓮の顎が動いた。だが、言葉は何ひとつ出てこなかった。

 そのとき、奈美が彼の背後から一歩、前に出てきた。

 車でこちらへ向かう間に、彼女は自分を立て直していたのだろう。わかる。声の震えは綿密に調整されていた――気づかせるには十分、だが「取り乱しているだけ」と片づけられない程度に。彼女はまず、集まりの名残でまだ近くに残っている人々へ視線を走らせ、それから蒼一郎に目を定め、最後に私へ戻した。

「結衣」吐き出す息に、言葉の重みが乗っていた。

「こんなこと、したくない。でも、今夜のタイミング――あなたがそこにいるはず、なかった。九条の内輪の席だったのに。それで襲撃が起きて、みんな散り散りに...

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