第5章

 蓮は、私が車に乗り込みドアを閉めるまで、まだ何か話していた。

 ロビーのガラス越しでは、彼の言葉はすべて音を失った。蒼一郎が縁石から車を出し、そのまま走り出す。私は窓の外を流れていく街を眺めながら、父のことを考えていた。

 父は、子どもの存在を忘れるような親ではない。

 むしろ逆だ。何にでも必ず顔を出し、こちらをまるで査定対象みたいな気分にさせるタイプ。家の集まりはもちろん、重要な紹介の場には必ずいる。神崎宗一は時間ぴったりに、相応しいスーツで、相応しい相手に相応しい言葉を用意して現れる。私の成長も、帳簿を追うのと同じやり方で追っていた。体系的に、感情抜きで。

 父が「元気か」と尋...

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