第7章
車に着く前に、蓮が出てきた。
「結衣」抑えた声だった。
「まだ終わってない」
私は歩みを止めなかった。
蓮の手が私の腕をつかんだ。
蒼一郎が動くのは見えなかった。ただ空気がすっと変わって、次の瞬間には蓮の握力が消えていた。蒼一郎が私と蓮の間に立ち、蓮は二歩よろめいて下がる。片手で口元を押さえ、その唇の端に黒いものがにじんでいた。
蒼一郎は声を荒らげない。
「もう一度触ったら、二度と触れないようにしてやる」
蓮が蒼一郎を見た。
言いかけた言葉は、結局、外に出てこなかった。顔つきが変わっていた――取り繕った落ち着きでも、練習済みの表情でもない。その下に隠れていた何...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
縮小
拡大
