第36章 抑えきれない懐かしさ

ドアをノックする音が聞こえ、藤原薫は立ち上がって開けに行った。

開けると、木村凌が玄関に立っていた。

「木村さん、何かご用でしょうか?」

木村凌は部屋の中を覗き込んで、「夏子を探しているんだ」

佐藤夏子は立ち上がって近づいてきた。「何の用?」

木村凌は言った。「葉月が嘔吐と下痢が止まらなくて、君に会いたいって」

佐藤夏子は眉を上げた。「彼は死にかけてるわけでもないのに、遺言でもあるの?なぜ私に会いたいのかしら?」

木村凌は驚いた顔で佐藤夏子を見つめた。「どうしてそんなこと言うんだ?」

佐藤葉月は佐藤夏子の実の兄なのに、今こんなにも冷たい態度を取...

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