第119章

新谷杏那の体は石のように硬直した。背後にまとわりつくねっとりとした嘲けりの視線が、まるで冷たい毒蛇となって脊髄を這い上がり、全身に悪寒を走らせる。

個室の中は死んだように静まり返っていた。突如として起きた異変に誰もが息を呑み、声を発することすらできない。ただ一人、怒りに息を荒らげる立花弘の呼吸音だけが響いている。

二人の間に流れる異様な空気を、彼は鋭く察知していた。何より、腕の中にいる少女が抑えきれずに震えているのが伝わってくる。

胸騒ぎを覚えた立花弘は、新谷杏那を背後に庇うようにして一歩前へ踏み出し、二人の間を完全に遮った。

スーツの襟元を正し、上流階級に属する者としての余裕を見せ...

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