第157章

南は小さく頷き、淡々と言った。

「分かってる。先に出かけるね」

玄関で車のキーを掴み、そのままドアを押して外へ出る。周防奏夢の怒りなど、南にとっては小波ほどの意味もなかった。

二階――固く閉ざされた寝室。

周防奏夢はドレッサーの上に並んだ瓶や小物を、腕でまとめて薙ぎ払った。ガシャン、とガラスが砕ける音が部屋に刺さる。目は真っ赤で、肩が大きく上下していた。

コン、コン。

扉の向こうから、かすかなノックが二度。

「奏夢、私よ」

吉田麗華が声を落とし、扉越しに諭す。

「こんなふうに拗ねて暴れて、何になるの。旦那様と奥様を遠ざけるだけよ。今のあなたに必要なのは、物を壊すことじゃない...

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