第158章

南は、男の瞳の奥に隠しもしない独占欲と甘い溺愛が揺れているのを見て、ようやく唇の端に、ごく淡い弧を描いた。

古川和津は、彼女の静かで柔らかな横顔を見つめたまま、喉仏が小さく上下する。堪えきれず、そっと俯いて彼女の頭頂に軽い口づけを落とす。

南は目の前の分厚いFLのカタログに視線を落とした。白い指先で金箔押しの表紙をなぞり――けれど開くことはせず、そのまま古川和津のほうへ押し返した。

「気に入らないのか?」

古川和津は眉をわずかに上げる。深い眼差しに、意外そうな色が走った。

FLのオートクチュールは社交界でも「金を積んでも手に入らない」と言われる代物だ。枠ひとつ取るために、どれだけの...

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