第161章

彼女の、まるで敵に囲まれたみたいな滑稽な構えを眺めて、南の動きがわずかに止まった。

すらりとした指先が、耳元に落ちていた細い髪を、ただ気まぐれに後ろへ払う。

手を下ろすと、南は須藤香里を見下ろした。口元に浮かんだのは、嘲りを極限まで研ぎ澄ました冷笑だった。

「須藤部長、被害妄想も大概にして。安心して。あなたみたいな顔、殴ったら手が汚れるだけ。もう一回でも触ったら、洗っても落ちなくなりそう」

「……っ、あんた!」須藤香里は怒りで全身を震わせ、爪が掌に食い込むほど握りしめた。今すぐ飛びかかって、南のあの澄ました顔を引き裂いてやりたい――そんな衝動が、喉元までせり上がる。

南はそれ以上相...

ログインして続きを読む