第163章

南は執務室へ戻ると、背中でドアを押し開けた。

太田瀬里奈がぴたりと後ろにつき、手早くドアを閉める。さらに用心深く、カチャリと鍵まで掛けた。

「南社長!」

太田瀬里奈は顔面蒼白で、声が震えていた。「さっき会議室でおっしゃってた対策って……いったい何なんですか? 向こうはもう宣伝用の原稿まで、ネットに洪水みたいに流してます。こっちが真っ向勝負で突っ込んだら、新作が丸ごと不良在庫になりかねません。損失は……億近いですよ! それに世論だって――」

南はデスクへ歩き、トレンチコートを脱いでハンガーラックに掛けた。動きは終始、落ち着き払っている。

机上のグラスに手を伸ばし、一口だけ含む。冷えた...

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