第187章

彼女は立ち上がると、今にも泣き出しそうな杉本麗良をぐいっと引き寄せ、自分の背中へ押し込んだ。

「私の後ろにいなさい」

南の声は氷みたいに冷たく、背筋を凍らせる殺気を孕んでいた。振り返りもせず、低い声で言い添える。

「自分を守って」

「南社長、早く逃げてください……っ」杉本麗良は南のトレンチの裾を必死に掴み、震える声で訴えた。涙が目いっぱいに溜まり、今にもこぼれ落ちそうだ。

南は身分のある人だ。ここで一歩でも間違いがあってはいけない。

もし自分のせいで南が傷ついたら——一生、許せない。

「怖がるな」

南は背中越しに麗良の震える手の甲を押さえた。低く、揺れない声。胸の奥にすとんと...

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