第191章

彼女は、怒る気力さえ湧かなかった。ただ――滑稽だと思っただけ。

南の、圧を帯びた眼差しがすっと下がる。狙い澄ましたように、新谷杏那の胸元へ。

ジャケットに半分隠れた場所に、同じように通行証がぶら下がっていた。

「新谷お嬢様はスポンサーの観戦チケットだって言ってたよね? なのに胸に下げてるの、どう見ても『アシスタント』のパスじゃない」

声量は大きくない。けれど刃のように通り、周囲の耳へ一文字ずつ突き刺さっていく。

南は唇の端を、嘲るようにわずか持ち上げた。新谷杏那が必死に貼り付けていた薄い虚飾を、躊躇なく剥ぎ取る。

「世界中のトップメゾンに出禁を食らって、盗作の汚名まで背負った人間...

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