第192章

林田篠佳の言葉が落ちるや否や、廊下の空気が――すうっと凍りついた。

杉本麗良は悔しさで目尻を赤くし、今にも飛びかかりそうになる。だが、白く細い手がそっと彼女を後ろへ押しやった。

南が、顔を上げる。

波一つ立たない古井戸のようだった瞳が、今は嵐を孕んだ深海みたいに揺れていた。

道化なら笑って見逃せる。けれど、自分のそばの人間を踏みにじるのだけは――許さない。

「今、何て言った?」

声は驚くほど軽い。なのに、背骨をなぞるような寒気が混じっていた。

林田篠佳はその視線に一瞬、心臓が跳ねる。それでも周囲の数を頼みに、顎を突き出して挑発した。

「なに? 痛いとこ突かれた? あんたが身体...

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