第37章

昨夜のあの騒動も、突然の雷鳴も、南の心にはいささかの痕跡も残さなかった。

翌朝、彼女が目を覚ますと、外は清々しい光に満ちていた。ナイトテーブルに静かに置かれたスマートフォンの画面が点灯し、数分前に受信した新着メッセージを表示している。送り主は古川和津だ。

『何が食べたい?』

簡潔な文面。彼らしいスタイルだ。

南は一瞥をくれた。

『もう食べた』

返信はほぼ秒殺だった。

『じゃあ、どこに遊びに行きたい?』

南は少し呆れたように眉間を揉んだ。この男、どうやら「婚約者」という役柄にのめり込みすぎているようだ。

『仕事』

その二文字を送信すると、彼女はスマートフォンを置き、身支度を...

ログインして続きを読む