第50章

個室の中では周防一家が団欒の時を楽しんでいたが、扉に隔てられた外の世界は全く別の様相を呈していた。

立花家が予約したレストランの個室は、息が詰まるほど重苦しい空気に包まれていた。

鈴木玉奈は新谷杏那のスカートの裾を直しながら、声を潜めて言い聞かせた。

「杏那、後でうまくやるのよ。弘さんにたくさん話しかけて。あなたたちの結婚さえ決まれば、うちは助かるんだから」

新谷杏那は上の空で頷いた。その脳裏を占めているのは、あの日、南の姿を目にした途端に魂を抜かれたようになった立花弘の姿だった。

彼女はもどかしさに苛立ち、吐き捨てるように言った。

「お母さん、もう言わないで。この前の駐車場で南...

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