第52章

立花弘は躊躇うことなく身をかわし、あろうことか嫌悪感を露わにして手で突き放した。

「きゃっ!」不意を突かれた新谷杏那は無様に床へ倒れ込み、肘と膝が硬い床に打ち付けられて鈍い音を立てた。

「杏那!」鈴木玉奈は悲痛な声を上げ、慌てて娘を抱き起こしに駆け寄った。新谷杏那の肘に滲む血の筋を目にした瞬間、彼女の胸の内に怒りの炎がカッと燃え上がり、顔を上げて立花弘に食って掛かろうとした。

だが、瀬戸信美の氷のように冷たく、嘲笑を含んだ視線とぶつかった途端、鈴木玉奈の言葉はすべて喉の奥に張り付き、一言も発することができなくなった。

瀬戸信美は床にへたり込む新谷杏那を見下ろし、口元に隠しきれない軽蔑...

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