第70章

彼女はすでに調べ上げていた。今夜、古川和津はクルーザーをまるごと一隻貸し切っており、客は誰も招いていないということを。

つまり、彼は一人きりということだ。

クルーザーが岸に寄り、甲板から降りてきた古川和津が、夜の闇の中で自分を待っている彼女の姿を真っ先に見つける。その美しさと深い愛情に衝撃を受け、彼女のひたむきさに心を打たれるはずだ。そうなれば、南のことなどすっかり忘れてしまうに違いない。彼女はそんな想像を膨らませていた。

甘い幻想に浸っていると、遠くの海上に、明かりを灯した純白のクルーザーがゆっくりと桟橋へ向かってくるのが見えた。

周防奏夢の心臓は一瞬で跳ね上がった。慌ててショール...

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