第73章

南は彼を無視し、口の開いた野菜かごからしなびたトマトを無造作に拾い上げると、指先で弄びながら、冷ややかな笑みを口元に浮かべた。

彼女は振り返り、そのトマトを料理長の足元に放り投げた。その声は氷のように冷たく、それでいて厨房の隅々にまで真っ直ぐに響き渡った。

「太田瀬里奈」

「はい!」

「昨日の欠席者と、今日出勤している従業員を全員ここに集めなさい」

太田瀬里奈の行動力は凄まじく、わずか十分後には、ガランとしていた食堂が人々のざわめきで溢れ返った。

通知を受けた従業員たちは、病欠で家で休んでいた者も、無理を押して出勤していた者も、一人残らず集められていた。

皆は顔を見合わせ、病み...

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