第97章

 親指の腹で、キスで赤く腫れて濡れた彼女の唇をそっと撫でる。その瞳の奥には、海のように暗く深い欲望が渦巻いていた。

「金木犀の香りがする」

 かすれた声には、満ち足りた笑みが微かに滲んでいる。

「すごく甘い」

 南は荒い息を吐き出し、心臓は早鐘のように狂ったリズムを刻んでいる。

 水気を帯びた瞳を上げ、恥ずかしさと怒りの入り混じった視線で、ちゃっかり甘い汁を吸っておきながら悪びれない目の前の男を睨みつけた。そして、その厚い胸板をポカッと軽く叩く。

「不真面目なんだから!」

 彼が一瞬気を抜いた隙を突き、南はようやくその腕の中から抜け出した。立ち上がると僅かに乱れた服の皺を伸ばし...

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