第56章

灰と吸い殻でいっぱいになったワイングラスが、藤原裕也という人物と共に茂野にせの背後に現れた。

茂野にせが立ち上がろうとして半身を起こしかけたところで、藤原裕也に肩を押さえつけられ、座らされた。彼はその「ワイン」のグラスを茂野にせの前に置いた。

「我が社の社員が無礼を働き、茂野さんにご不快な思いをさせたようで。私の顔を立てていただけるなら、このお酒は林田浅子に代わって私からの謝罪の印です」

一同は灰と吸い殻でいっぱいのワインを見て愕然とし、茂野にせのために冷や汗をかいた。数人の同僚は内心で喜びを隠しきれずにいた。

茂野にせの顔色は悪かったが、このお酒を断る勇気はなかった。もし飲まなけれ...

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