第58章

雪子は手を少し上げると、アシスタントやマネージャー、そしてボディガードたちは全員退出した。彼女は藤原裕也から近すぎず遠すぎない位置までそっと歩み寄り、彼が電話を終えるまでじっと立っていた。

「藤原社長、遅れてませんよね」

藤原裕也は彼女に座るよう促し、手元のインターホンを押した。すぐに竹内敬太が一束の契約書を抱えて入ってきた。

「雪子さん、契約書をまずご確認ください。もし何か不適切な箇所があれば、おっしゃってください」

藤原裕也は自分の社長椅子に座り、竹内敬太は雪子に契約書を渡し、自ら彼女のためにコーヒーを入れた。

「問題ありません。藤原株式会社と提携できるのは私の光栄です」雪子は...

ログインして続きを読む