第108章 旧友を訪ねる

水原寧々は腕時計に視線を落とした。時刻はまだ午後4時30分。林田祐一は今日一日、会社に姿を見せなかった。これ以上社内で彼を待ち続ける気にはなれない。人にはやはり自身の友人とコミュニティが必要だ。仕事だけの人生など、どれほど孤独なことだろう。

海市という街は、水原寧々にとって決して馴染みの薄い場所ではない。何しろ、彼女はここで13年間も暮らしていたのだから。車を走らせ、海市生物研究所へと直行すると、久しく開けることのなかったその扉を押し開けた。低い位置でポニーテールを結び、水色のロングワンピースの上に白衣を羽織った女性が、腰を屈めてデータと睨めっこしている。青子先輩だ。

ガラスケースの前で...

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