第120章 血の海の深い恨み

林田祐一は腕時計に目を落とした。背後からモーター音が響いてくる。甲板に立つと、夏目布川がひとりの男を捕らえているのが見えた。男は頭から黒い布袋を被らされ、甲板にひざまずいたまま、水から引き揚げられた魚のように必死に身をよじっている。

「このジジイ、逃げ足が速くてな。危うく取り逃がすところだったぜ」

夏目布川は甲板に唾を吐き捨てると、煙草に火をつけ、長年禁煙していたヤク中のように深く煙を吸い込んだ。

「他の奴らは?」

「餌は撒いたんだが、食いつかなくてな。危うく魚まで逃げられるところだった。だから仕方なく、魚だけ持ち帰ってきたわけだ。獲物も囮も両方失うわけにはいかねえだろ?」

夏目布...

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