第98章 求婚

桜は人だかりの背後に身を潜め、藤原南の後を追うことはなかった。その瞳には深い喪失感と戸惑いが色濃く滲んでいる。彼女は手の甲でゆっくりと涙を拭い、彼との関係が今度こそ本当に終わってしまったのだと心の中で悟っていた。

もう、この恋を繋ぎ止めるために心を砕く気力など残っていない。今の彼女がすがりつきたいのは、自分のキャリアだけだった。桜の視線は焦燥と不安に駆られ、まるで最後の命綱を求めるかのように宴会場をさまよう。しかし、隅から隅まで探し回っても、コフィロの姿は見当たらなかった。

「まさか、今日は来ていないの? 林田のお爺様の宴会だし、桃ちゃんは彼も招待状を受け取ったって言っていたのに……」

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