第7章

空良視点

テントの外でカメラのレンズを拭いている。目の前にはサバンナが広がっている。二十メートル先では、夕暮れの光の中でクロサイたちが草を食んでいる。

カメラを構える。ショットを撮る。これこそが、私が戦って手に入れたものだ。黒木プロジェクトは中止になった。ケニアの役人たちは調査を受けている。マサイの土地は守られた。私が、勝ったのだ。

なのに、どうしてこんなに空虚なんだろう?

カメラを下ろし、左手を見る。薬指の日焼けの跡がまだ残っている。あの指輪は空港で捨てた。けれど、跡は消えようとしない。

将臣が心から消えないように。

キペンゲットがコーヒーを持って歩いてくる。この...

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