第105章 行く

神野若芽が部屋に戻ったのは、自分の荷物を取りに行くためだった。

孤児院へ行くのは、当然、行く。

けれど神野若芽が向かう理由は、神野孝峰のためじゃない。あの自閉症の小さな男の子のためだ。

車が孤児院の近くまで来たとき、若芽の耳に、二、三人の話し声が飛び込んできた。

窓越しに声のするほうを見ると、門の前にはすでに一台、セダンが停まっている。

院長と、見知らぬ外国人。

――院長が呼んだ心理カウンセラー、ってやつだろうか。

その外国人のそばには、身なりのいい三人が立っていた。

その三人は、若芽が孤児院にいた頃に調べてある。ほしの父親と母親、それから実の兄。

若芽はちらりと彼らを見て...

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