第108章 病気になった

数呼吸ぶんの沈黙のあと、権田真鳥はそっと手を上げた。ドアノブに指先を置き、わざとらしいほどゆっくりと捻る。音は極限まで殺し、わずかな隙間だけ開けて中を覗き込んだ。

個室の照明は少し落ちている。だが、ソファの上で小さく縮こまっている影を見つけるには十分だった。

――なんで、そんな寝方をしてる。

神医だ。自分の体調管理くらい、当然わきまえているはず。

それでも真冬にそんな格好で、風邪でも引いたらどうする。

権田真鳥は足音を消し、部屋へ入った。

警戒心の塊みたいな神野若芽は、誰かが近づいた気配だけでぱっと目を開けた。上体を起こし、鋭く来訪者を見上げる。

その視界に、見慣れた端正な横顔...

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