第123章 私に任せて

神野若奈の声は少し抑えられていた。けれど教室が静まり返っていたせいで、誰の耳にもはっきり届く。

神野若芽は気のない仕草で、横に並ぶ黒白の鍵盤をちらりと見下ろす。次いで腰を下ろすと、視線すら落とさず片手で鍵盤に触れ、指先を適当に滑らせた。

たった数音。

それだけで、息を忘れるほど綺麗だった。

余韻がすっと途切れた瞬間、そこにいた全員が「もっと聴きたい」とでも言いたげな顔になる。

神野若芽の演奏を聴くのは、これで二度目だ。前はクリスマス会のとき。

この美しさをもう一度聴けたなら、もう悔いはない――そんなふうに本気で思ってしまうほどだった。

「……じゃ、帰る」

神野若芽は立ち上がり...

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