第133章 江口岩司

神野若芽は神野家を出たあと、そのまま散歩がてら耀宿レストランへ向かった。

駐車場に停まっている、控えめなのに隠しきれない高級感のフェラーリを見つけた瞬間、胸の奥で舌打ちする。

――また、あいつがこっそり抜け出してきた。

しかも十中八九、目的は自分だ。ライブ目前の時期に、用もなくふらふら出てくるはずがない。

「かめちゃん、2階にお客さん。若芽ちゃんに会いたいって」

フロントで手を動かしながら、半田虹が顔だけ上げて言った。

「めっちゃイケてるおじさん。たぶん30代くらい」

「了解」

神野若芽は短く返し、階段を上がる。個室の前で足を止め、ノックもせずに扉を押し開けた。

「若芽さん...

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