第166章 謎めいたレーサー

「世界ジュニアレーシング選手権で、あの赤い……ってこと?」

神野若奈は目をくわっと見開いた。胡桃みたいに、まん丸に。

「そう! あの優勝マシンだよ!」

神野若帆が興奮した声で叫ぶ。

queen。

松本萬里はレースを追いかけるタイプじゃない。けれど上流階級の奥様として、世界選手権の話題くらいは耳に入るし、娘たちにせがまれて録画を一緒に観たこともある。

正直、彼女も「あのチャンピオン」に心を奪われたひとりだった。

夢でもいいから、本人をこの目で見てみたい。あのマシンに、指先で触れてみたい。

ただ――分かっている。

ああいう世界の人間は、あまりにも遠い。

「パパがチャンピオンレ...

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