第167章 神野若芽の言うことだけを聞く

理屈で言えば、朔明は母の味方をするべきだ。だが今の朔明は、成功の見込みが薄いと分かっていながらも、神野若芽が弟を部屋から引っ張り出してくれることを願っていた。

神野若芽は無表情のまま、両手をポケットに突っ込み、足を上げると周防ほしの部屋のドアを、軽く二度――コン、コンと蹴った。

昔からのやり方。

部屋の中は、しんと静まり返ったまま。

「チッ。孤児院とでも思ってんの?」

周防母が鼻でせせら笑い、ふん、と息を吐く。周防朔明も小さくため息をついた。

だが次の瞬間、周防母の笑みが凍りつく。

――ガチャ。

ドアが開く音。

周防母はぎこちなく首を回した。そこには、スーツケースの取っ手を...

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