第170章 神野若芽の隠された身分

だが、見ているのと自分で殻をむくのとでは、話が別だ。

周防ほしは周防家にいた頃、周防朔明が蟹アレルギーだったせいで、家の台所ではほとんど蟹料理が出なかった。

孤児院に来てからは、なおさら口にできない。

本当は、ずっと蟹が好きだったのに。

寺内七造は、周防ほしの不器用さを見て吹き出しそうになり、こらえきれずに彼の皿を引き寄せた。慣れた手つきで甲羅をぱきりと外し、身をきれいにしてから、そっと目の前へ押し戻す。

「ほら、食えよ」

周防ほしは皿の蟹を見つめ、眉をわずかに寄せた。迷いと、言いようのない複雑さが滲む。

なかなか手が伸びない。

寺内七造は急かさず、横目でこっそり様子をうかが...

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