第177章 ワシは負けた

パチン――

黒石が打ち下ろされる。短く、鋭い音。

阿部先生は白を置いたばかりで、まだ手を引ききれていなかった。

ふっと顔を上げ、神野若芽を見る。

少女は神経を研ぎ澄ませ、盤だけを見つめている。外の気配など、最初から存在しないかのように。

阿部先生は静かに手を戻し、自分の呼吸を崩さぬまま、碁笥から石を取り出した。

神保淵は神野若芽の手段に圧倒されつつも、同時に阿部先生へ深い敬意を抱く。

あの気迫で押し潰しにくる攻めに対して、阿部先生は泰然自若。自分のリズムを守り、慌てず、乱れない。

――この心の強さ。自分には、まだ磨く余地がある。

刻々と時間が過ぎていく。

そして阿部先生は...

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